グラデーションを捉える感受性をもつ東京。集う仕組みを再構築し、未来の実験場へ

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、姿を変える東京。 一方で、東京を歩いてみると、愛しき「相変わらず」を垣間見ます。 外出自粛の緩和に伴い、東京の街には人が戻り、お店も観光地も活気を取り戻しつつあります。会えない日々を越えて、いざ、リアルの場所で会ってみると、対面することの価値を感じることも。 マスメディアで見せられる新しい世界と、リアルな世界の間で感じる違和感を深堀り、思想と知見を集めながら、いまこそ、新しい東京の価値を考えよう。 「CAFE」=「Community Access For Everyone」 単なるコーヒーショップという意味ではなく、みんなが集まるコミュニティの場といういう意味をもつ「CAFE」を、東京をはじめとする様々な場所で開発し、運営するカフェ・カンパニー株式会社。 共感が生まれるコミュニティ「CAFE」を創り続けた楠本修二郎さんに、これまでの東京と、これからの東京についてお話いただきました。

楠本 修二郎と東京の出会い






ー 大学入学に際して上京されたと伺いましたが、どうして東京でコミュニティというビジネスをやっていこうと考えられたのでしょうか。


東京を選んだっていう発想はなくて、そもそも俺の頃は選べなかったんですよね。今はSNSがあるから、東京ってこういうとこだ、この会社ってこういうとこだ、このコミュニティってこういう雰囲気ねとかってみんな見てから、どこに行くか選ぶのが当たり前になったけど、当時は、偶然の必然性みたいなものを信じるしかないから、僕は偶然の連続の中に今存在してるとしか思ってないんです。


ー「今は、偶然の連続の中にある」ということですね。

まさに、そういうこと。僕の偶然の必然性の原点は、小学校時代の親父が引っ越したことから始まっていて。福岡の街の真ん中で生まれ育ったんですけど、漁師町に引っ越したんです。西戸崎っていうところで、隣が米軍基地だったんです。

フェンス越しに、外国を見てみると、やっぱり文化が全然違うんですよね。目がハートマークになって「アメリカかっこいい」って、なっちゃってて。




ちょっとロマンティックな話をすると、毎日夕陽が沈む水平線と隣のアメリカを見ていると「いつかこのボーダー超えていこう」って思ったりもして。当時は、いきなり海外に行くっていう発想がなく「まずは東京ばいね」って思って、大学入学の時に上京しました。

いざ上京してみると、行ったその日に、また偶然の必然性が生まれて。
上京したその日に兄ちゃんに六本木に連れて行ってもらったんです。当時交差点にあった「Mr.JAMES」っていうブルースとカントリーのライブハウスがあって、うちの兄ちゃんがそこで働いてたんですね。「弟の修二郎です」みたいなことを言ってるうちに「じゃあ、明日からシフト7時~10時ね」って、いきなり六本木生活が始まりました笑。

そこから、ブルースのライブハウスや、ショーパブ、レゲエのライブハウス、いろんなところで働いて思ったのが、「オンリーワンの価値をつくると、世界が友だちになるんだ」みたいなことで、そこでしか味わえないもの、楽しめないものを持った店には、それが好きで共感するひとたちが集まってくるんですよね。やっぱり東京はすげえなぁって思ったし、共感で集まるってすごく面白いなって思うようになりました。



共感で人が集まるリアルなコミュニティ



偶然と必然の中で初めて東京に来て以来、僕はリアルなコミュニティ創りをずっとやってきましたね。
僕が共感する人がいると、僕と同じように共感する人がいるという場をつくる。連鎖的に共感しながら集っていく場所です。

ー楠本さんのつくるコミュニティの根底には「共感」があったのですね。


共感ってなんだろう、僕はなんで共感が好きなんだろうって考えた時に、共感って、相手の気持ちに入りこむというのはもちろんあるけど、それだけじゃなくって、そこで「自分」を感じているんじゃないかなって思うんですよ。

ーたしかに、人の話を聞いているときに「私もそう思うなぁ」とか「私もそれ感じたことあるなぁ」とかって、「私視点」を持つことが共感かもしれませんね。




そうそう、「私もそう思うなぁ」って今まで気がつかなった新しい自分、つまり自分の未来を見つけたり、「私もそれ感じたことあるなぁ」って、自分の過去のノスタルジーを感じたりする。過去と未来を行き来しながら、未来の自分にワクワクする。僕の場合は、そういうコミュニティを作りたいと思ってます。

そのステージとして、東京は、すごく豊かな感受性と多様性を超えたグラデーションの中で、共感の糸が張り巡らされた都市だと思っていて、未来が見える都市だと思っています。

ー共感するための感受性も豊かな人が多く、また国内外のさまざまな土地から人が集まる多様性のある都市が、東京ということですね。

繊細で、大量の共感が生まれ続ける場所だからこそ、どんどん未来が見えてくる場所であると思っています。


楠本 修二郎が考える、アフターコロナの東京


リモートが普及して、都心のオフィス専用の街に行く必要が相対的になくなっている。ひいては、自宅に近いところや自宅でも仕事できるよね、というコンセンサスは確かに広がっていますよね。

ただ、自宅でできるかっていうとすぐには難しくって、今までは、渋谷や丸の内、都心のシェアオフィスやコワーキングスペースが増えてたけど、これから先は、郊外のコワーキング&カフェみたいなのが、増えていくのではないかと考えています

それでも、東京都心のビルの建築は止まらないんですよね。もう建設を始めていたり、建設することが決定しているビルは、建っちゃうんですよね。必要がないのに建ってしまう、だから用途を変えていく必要があると思うんですよね。




明治時代以来、用途制限というものが行政によって定められていて、住むところはここ、働くところはここ、商業はここ、工業はここ、って決まってるんです。そうすると、街にはどんどん余白がなくなってしまう。僕はずっと「街には緩さが必要だ」って言っています。その余白や緩さを、僕たちは「縁側」と言っているんですけど、完全に分断するのではなく、あいまいな場をあえて設けることで、そこに人々が集うし、多様性のある語らいの場が演出され、いろんな物が生まれていくんだと思うんですよね。

unitoは使われ方の柔軟性があって、「余白」という何でもない場所をつくることを先立って始めているけど、これがこれから先、すごく大事なことだと思っています。そういう場所が増えていくだろうと。用途の曖昧さ、あるいは空白性、余白力みたいなことが求められて、住宅と商業とオフィスは近くなっていくと考えています。

ー インタビューに来る前、「リモートワークなどで、都心から皆が離れていってしまうと、集うことが難しくなってしまうのではないか」という想定を持っていたのですが、分断せずに境界線を緩くすることによって、むしろ余白ができて、集いが生まれるというお話を伺い、一気に覆されました…!

都心の摩天楼が高くなってるとこであればあるほど、緩くすればいいんです。「エグゼクティブな人しか入れんとこばいね」っていう一部の選ばれた人しか来られない、排他する場所が多かったんですよね。

ー 確かに、「丸の内=ビジネスマンの街」というような枠組みがなくなって、老若男女、国籍や肩書きを問わない様々な人が集えるようになっていくと、集うことで何か巻きおこるってところの質というか、偶発性が高まる気がしますね。

そういう偶発的なものから生まれる共感に未来を見ることができて、自分がワクワクできる場所東京はそういう場所じゃないといけないって、思っています。




先ほども言ったことに重なりますが、東京というか日本の強みは、グラデーションを表現する言語を持ってることだと思っていて、夕焼けの色でも、茜色をはじめ、10種類ぐらいあるでしょ。色のトーンをそれだけ多様に捉えているってことは、その感受性ってやっぱりすごく繊細なもので、多様性を受け入れて、かつ、つなげていく力が日本にはあるなと思うんですよね。例えば、想像性、哲学、生態系論、地球との関係性、水、空気、ソイル…。繊細な感受性があるからこそ、細胞レベルに、細かなものまで感じ取れる力が日本人にはあると思っています。


グラデーションを捉える感受性をもつ東京
集う仕組みを再構築し、未来の壮大な実験場へ



ーそういう細々とした要素を拾える感受性がある日本人が、集うことによって新しいセッションというか、新しい未来をつくっていくのが東京なんですね。

まさに、そうですね。やっぱり世界の三大都市に入る東京なんだから、未来を作っていかなければならない。未来への壮大な実験をしていかなければならないと思うんですよね。




じゃあ「何の実験をしていくべきか」ということを考えた時に、僕は「食の実験」をしていくべきだと思っています。食を考えていくためには、先ほど挙げた、水や空気、ソイルなど、そういう繊細な要素を捉えていく必要がある。食は、東京人のグラデーションを捉える感受性がまさに発揮される領域と思うんです。

だからこそ、東京が実験の場となるように、集う仕組みを再構築していく必要があると思っています。用途の区切りをもっと曖昧にして、縁側をつくり、偶発的な集いが生まれる場所を演出していくべきだと考えています。

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