社会人になって4回目の梅雨。
「ボーナスをもらってからね。」って、転職をする同期がちらほらいて、デスクの引き出しには寄せ書き用のメッセージカードが溜まってしまっている。
私はというものの、公私共に、今年も変わりなく生きていこうと思っている。慣れてきた仕事を卒なくこなすオフィスも、帰れば口に慣れたお母さんのご飯が用意されている実家も、この上なく居心地が良く、変化することが少し怖いほどだった。
ただ、そんなイーブンな日々を送っている私も、時々強い周波を食らったかのように、調子を乱してしまうことがある。それは、Instagramを開くとき、あるいは、同世代の友人との飲み会で、結婚や転職など人生を意気揚々と展開していく友人のその目を見る時、私は自分のペースを見失いそうになった。
月の半分だけ、興味本位の一人暮らしを手ぶらで始めてみる
極め付けは母の一言だった。
「お隣のひとみちゃんも1人暮らしを始めたみたいね。あなたも料理くらいできるようにならないと。」
私はこのソファに座る時は、いつもこの座り方をしている。
中学生の頃、西武ライオンズが優勝したときのセールで父が買ってきたこのソファ。
ただ、今日はなんだか座り心地がしっくりこない。
目を伏せるように、Instagramを開いて、飛び込んできたのが、半一人暮らしができる「unito」という部屋の広告。
家具・家電つき、水光熱などのインフラの契約も不要で、明日から住めるらしい。しかも家賃は住んだ分だけ、契約も1ヶ月からできるとのこと。
私はまるで旅行にいくかのように、必要な着替えをキャリーケースに入れて、一応「引越し」をした。
お部屋選びは住んでみたい「下町」エリアで
必要に駆られてというより、追われるように始めた一人暮らし。
部屋タイプもエリアも特に条件がなかったので、大学生の頃から居心地がよくて良く遊びにいっていた蔵前・浅草の下町エリアで一人暮らしにちょうどよいコンパクトなお部屋を選んだ。
スーツケースを引いて、雷門を抜けると、観光客の気分になる。
ただ、生活を重ねていく度に、「私の街」になっていくのは、後に覚える不思議な感覚だ。
グレートーンの「今」らしいお部屋
テレビやベッド、ケトル、ドライヤーなどの家具・家電が揃っているのはもちろん、シャンプーやパジャマ、タオルなどのアメニティ類も充実している。友人から、一人暮らしは初期費用の他に家具家電を揃えるのに20万円くらいかかると聞いていたので、手ぶらで入居できる軽やかさは拍子抜けしてしまうほどだった。
部屋の壁は、ブルーグレーで、丸い鏡がお気に入り。
蔵前・浅草エリアの、古き良きのなかに、「今」らしいデザインが溶け込むモダンさが以前からタイプだったので、この部屋のデザインはとても気に入っている。
休日は、TOKYOBIKEで隅田川をサイクリング
休日はフロントでTOKYOBIKEの自転車をレンタルして、蔵前や隅田川のエリアをサイクリング。川を渡って、押上の手前のエリアに小さなカフェやショップが増えていると聞いて、探索に出かけることにした。
夜ご飯は行きつけのMISOJYU。
珍しいお味噌汁専門店は、毎日の食事にちょうど良い。
「今日はどうなさいますか?」いつものお姉さんにそう聞かれると、ここが帰る場所になっていることを悟った。
下町の拍子に合わせて、生きるリズムが変わっていく
25年間住み続けた実家を出るなんて、一人暮らしは人生の一大イベントだと思っていたが、unitoのおかげで、思い立ったら明日にでもできるほど、軽やかに一人暮らしを始めることができた。
人生のフェーズを展開していく同年代を横目に、何も変わらない私をチクリチクリを刺していた名も無い焦燥感は、unitoでの暮らしを始めてから、いつの間にか消え去っていった。
体を置く場所を、月の半分だけ実家から浅草の一人暮らしの部屋に変えてみる。
自然と体内に流れ込んでくる下町の拍子が、私を少しずつ変えてくれるのだった。