前編はこちら: https://unito.life/company/content/zorwrc_-o71m/ ー AIの発展、余暇で「自分がどう在るべきか」を考える時代へ この20年で民泊が登場し、ニッチながらも大きな可能性を秘めたマーケットが誕生しました。田中さんご自身は、民泊についてどのような印象をお持ちですか? 可能性しかないと考えています。レジデンスや暮らしの分野だけでなく、あらゆるものがシェアリングエコノミーの現象のひとつとして門戸が開かれた印象です。 これまで住宅は、戦後の借地借家法の影響で、流動性が低く住む場所を自由に選ぶのが難しい状況でした。地主の立場が強いことから “住む側の人々を守る法律” でもありましたが、かえって家と家を流動的に移動するのが難しくなってしまった。 しかし不動産が流動化しないと経済は活性化しないし、金融も回らない。そのような背景から定期借家制度が生まれ、よりカジュアルにシェアリングができるようになった。そういった時代の変遷は正しい流れだと思います。 今は、戦後の世の中ではありません。人々のニーズも変わってきています。例えば日本の場合、四季があり東京の夏は非常に暑く、涼しい場所にいたいという欲求を持つ人もいるでしょう。また、コロナのような大転換を経験すると、一つの場所に執着する必要がないと感じるようになります。 世代によっては車を所有しなくなったように、家を「買わなくてもいい、借りなくてもいい、移ろうように住んでいけばいい」という考え方も出てきています。 そういった流れから法制度も変わり、所有への欲も変わり、人々がもっと自由に動いていきたいという流れがあるのは必然だと思います。民泊の登場を含めて、これは大きな変化だったのではないでしょうか。 今後30年を見通すと、2050年の日本は働き方の多様化がさらに進み、暮らし方もより柔軟になっていくのではと考えています。そのなかで、Unitoのリレントをはじめとした「フレキシブルリビング」の仕組みは、どのように適応して広がっていくと思われますか? 今ある世界が緩やかに変化していくだけのような気がしていますが、全方位的に変わっていくのではと思います。まず「家」というのは非常に重要な拠点。それにもかかわらず、関連する行政の制度は、まだまだ硬直的です。住民票の扱いや契約を見ても、「あちこちを気軽に移動しながら暮らす」という発想が制度設計上、非常に難しい仕組みになっています。 「スイッチングコスト」の高い領域だからこそ、行政のDXが不可欠。不動産契約も、すでに一部ではオンラインで完結、物件を確認するような環境も整いつつあります。今後は透明性が高まり、プロセスの即時性が確保されていくでしょう。 さらに、視点を広げて2050年といった未来を見据えると、AIの進展によって、社会は大きく変わっている可能性があります。そのような未来が「良い未来」かは分かりませんが、人が働かなくてもよくなり、余暇の時間が増えているかもしれません。 そういう生き方が「良し」となるとすると、人は当然「自分らしく生きるとはどういうことか」をより深く問い始めると思うんです。 今は「仕事をしなければいけないから働いている」人が多いですが、今後は”DoingではなくBeing” 自分がどう在るべきかを軸に考える社会になっていく。そうすると、より多くの場所に行ってみたい、という欲求も高まっていくと思います。 高層ビルに囲まれた窮屈な空間にとどまるのではなく、もっと自由な暮らし方を選ぶ。そういう発想が、制度面でも社会的にも出てくると考えています。通信も交通も発展し、5Gが10Gになり、自動運転が一般化し、下手したら空を飛んで移動できるような時代になれば、移動のコストは圧倒的に下がるはずです。空間的な自由は、ますます広がっていく。 そうした世界に向かっていくべきだと思いますし、日本にはすでにそれを活かせる「資源」がある。観光資源も非常に豊かです。 たとえば今はセカンドホームのビジネスモデルも生まれています。そういった仕組みで、ある程度の標準化を持って全国に拠点を展開することが可能になりつつあります。 それらをUnitoのような仕組みと組み合わせることで、住む場所を柔軟に選べるようになり、滞在していない期間は運営側が宿泊者向けに活用する、というかたちで経済的・運用的なペインも減らしていけるのではないかと思います。 ーUnitoには、不動産の常識を覆す新たな視点で、旧来の暮らしの概念を打ち破ってほしい お話にあった通り、“地方” の別荘シェアリングを展開するプレイヤーと、”都心” の暮らしを柔軟化する僕たちUnitoのようなプレイヤーが両軸で存在しています。そこでフレキシブルリビングの未来の視点から、Unitoに期待すること、あるいはアセットマネジメントの観点や個人として望むことを伺えますでしょうか。 僕自身は現在都内を生活の拠点にしていますが、それこそ別荘サブスクを利用するなど、地方を楽しみながら移動する暮らし方も取り入れています。しかしながら基本的には都内重視型です。 それはたまたま都心で生まれ育ち、都心に住めるよう働いてきたからなのですが、最近のパブリックマーケットでの活動を通じて、自分を応援してくれる方々は地方在住だったり、経済的な面で課題を抱える方も多くいらっしゃいます。その方々には都心への憧れや、都心で働く人との交流のニーズが強い。数としては間違いなくこちらがマジョリティです。 経済の二極化は進んでいますが、数の経済としては地方に住む方のほうが圧倒的に多いです。そのため、情報収集や交流へのニーズは今後もなくならず、そういう意味での都市の機能は絶対に失われない。たとえリモートワークが普及しても、テクノロジーやトレンド、人の交流拠点としての最先端という都心の価値は続くでしょう。 しかし今の仕組みだと、現状では都心に住み続けられるのは一部の人だけです。Unitoはそのような方々に門戸を開き、社会的なセーフティーネットの役割を果たす可能性がある。マーケットの視点から見ても、この可能性は無限に広がっているのではないでしょうか。 「都心に住む人が、余裕のある働き方をするために地方へ移動する」という視点もありますが、僕は逆の視点を持っています。地方や郊外の方々が “短期間でも東京を良さを感じられる仕組み” が整い、都心への新しい流入が促進されればいいなと思っています。 あとは、この20年でマーケットのトレンドとして、以前私たちが苦労したアセットクラスへの理解が大きく変わったと感じています。 「住宅とホテルの間のグラデーション」が細分化されているけれども、それぞれの境界線が埋まり始めました。コリビング、シェアハウス、民泊、サービスアパートメント、マンスリーマンション、アパートメントホテルまで。それが滞在期間や契約形態が異なるにせよ、マーケットが活性化しプレイヤーが増えたことは、単なる競争だけでなく、「市場全体を盛り上げる原動力」として投資家目線でも良い流れだなと思っています。将来的にリート化や機関投資家が参入できる規模になると、さらに面白くなるのではとも思います。 また、不動産側からのアプローチでは生まれない発想を、アパグループやSANUなどがされている。この業界のイノベーション、仕組みやデザイン、暮らしの在り方など、新しい視点で切り込むプレイヤーが増えているので、旧来の不動産業界の常識を気にせずにスケールアップしてほしいと思います。Unitoにも、業界の常識を打ち破るような動きを期待しています。 プロフィール|田中 渓(写真右) 1982年 横浜出身。 上智大学 理工学部物理学科卒業。学科首席として同大学院に進学。 外資系の世界を目指し急遽渡米。 ビジネスセミナー「CVS Leadership Institute」に参加し個人優勝、チーム優勝を果たす。 大学院中退後53回の面接を経て、ゴールドマン・サックス証券株式会社に2007年に新卒入社。 ドラマ「ハゲタカ」の舞台になった投資部門であらゆる投資を行う。 500件以上の投資案件に携わり、60件以上の投資案件を実行。 投資規模は投資金額ベースで約4000億円、企業価値・資産価値ベースで1.2兆円を超える。 同社でマネージング・ディレクターに就任、投資部門の日本共同統括を務め、2024年に同社を退社。在籍17年間で20カ国以上の社内外300人を超える「億円」資産家、「兆円」資産家、産油国の王族など超富豪などと協業・交流をする中で、富裕層の哲学や思考、習慣などに触れ、その生態系を学ぶ。 現在は、数千億を運用するより少数精鋭の投資会社にて不動産投資責任者を務める。 私生活では365日朝3時45分に起床する生活を6年以上続け、毎日25kmランニング、60kmの自転車、7000mのスイムのいずれかをこなし、強靱な肉体と精神力、一生の財産にもなる「習慣化」の力を手に入れる。 ナミブ砂漠250kmマラソンでチーム戦世界一になる。 トレイルランニングレースの世界選手権UTMB完走、アイアンマンレースと呼ばれるトライアスロンにおいても世界大会にノミネート 2024年11月自身の著書「億までの人 億からの人」を徳間書店より出版。